自民党が、裏金で揺らいでいる。派閥解消や内部調査など刷新感のアピールに躍起だが、その“お手盛り感”に国会論戦でも追及が集中。世論の不信と失望を映し出すかのように、各種調査での政権・自民党支持率は“超低空飛行”という状態だ。「国民の浄財」たる、この政治資金。不正を許したその本質は何だったのか。抜け穴をふさぐにはどんな打ち手があるのか。そして、私たちはどんな姿勢で政治を監視すべきか。一連の事件の契機となった刑事告発をした、神戸学院大・上脇博之教授に聞いた。(JBpress編集部)
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1990年代政治改革は「失敗」した
――リクルート事件に端を発した1990年代の政治改革では、カネのかかる中選挙区制度が問題視され、小選挙区制が導入されました。いま振り返って、当時の改革をどう見ますか。
上脇氏:まず、当時の議論は建前だったと思いますが、仮にその建前に乗っかったとしても、結局裏金が作られたわけですから、効果はなかったんですね。同じく導入された政党助成制度も効果がなかったんです。
結局こうした事件を政治が起こしたということですから、当時の政治改革の中核は失敗だったと総括しなければなりません。
政党交付金について、かつて金丸信さんが「泥棒に追い銭だ」と警告していました。泥棒に入られて、あとから追いかけてお金をあげるようなものだと。その警告が的中しているわけですよ。
小選挙区制になったら、なぜきれいな政治選挙ができるのか。まったく論理的ではありません。お金ではなく政策で競うような選挙に変えるならば、完全な比例代表制にした方がいいと思います。
そうすれば、全国的には評判が悪くても足元の地盤だけは固めている政治家や、もともと足場が固められている2世3世の議員が激減するでしょう。女性議員も増えると思います。投票率さえ上がれば、小さな政党でも議席が取りやすくなります。
小選挙区制も政党交付金も、強いものに有利な制度です。自民党から出れば、選挙の供託金は政党交付金で工面でき、パーティーで事実上の企業献金も受けられます。
無所属や小さな政党でも政治に参加しやすくし、より政策選挙を活発化させるようにしなければなりません。