再審法改正に向けた機運高まる
刑事訴訟法の再審規定は条文にしてわずか19条しかなく、再審請求審での具体的審理の在り方も定まっていません。そのため、日弁連は「裁判所の裁量に委ねられており、証拠開示の基準や手続きも明確ではない」と指摘。再審規定に関する裁判所の裁量が極めて大きいため、取り扱う裁判官によって判断が異なる「再審格差」が生じていると訴えています。
冤罪を減らし、再審の長期化を防ぐためには、最終的には法改正しかありません。こうしたことから、「冤罪は国家による最大の人権侵害」と位置づける日弁連は、2022年に「再審法改正実現本部」を設置し、啓発活動や関係機関・国会議員らへの働きかけを強めてきました。
また、今年3月には国会議員による超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連綿」が発足しました。参加を表明したのは、衆参両院の130人余り。会長に就任した元文部科学大臣の柴山昌彦氏(自民党)は「無実の罪で刑に処せられた方々の苦労は筆舌に尽くしがたいものがある。再審のプロセスをしっかりと議論していくことが必要だ」と表明しました。
5月22日に結審する袴田事件の再審公判で、検察側は「袴田さんが真犯人」とする主張を崩していません。裁判の行方は予断を許しませんが、無実を訴え続けた袴田さんは間もなく90歳になります。袴田さんは冤罪の犠牲者だっただけでなく、「開かずの扉」と言われる再審制度そのものの犠牲者でもあったのかもしれません。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。