当時のロシアは、ウクライナ戦争で武器弾薬の供給が追いつかず、藁(わら)をもすがる思いで、北朝鮮に頼み込んだ。金正恩委員長は承諾し、以後、北朝鮮は「ロシアの兵器工場」と化した。

(参考記事)ロシアと北朝鮮に蜜月時代到来、一方で中国と北朝鮮がよそよそしく見える理由

 ところが今春になって、ロシアは自国での武器生産の目途がついてきた。そこで、プーチン大統領は、平壌訪問を躊躇しだしたのである。

ヘソを曲げた金正恩

 焦った北朝鮮は、3月下旬に金成男(キム・ソンナム)朝鮮労働党国際部長を北京に送り込み、中国からの説得を要請した。つまり、5月に北京を訪問した後、その足で平壌を訪問してほしいということだ。

 だが中国とて、勝手に自国よりもロシアと蜜月関係を結んだ北朝鮮のことは、快く思っていない。そこで取ってつけたように、4月中旬に趙楽際全国人民代表大会常務委員長を平壌に行かせて、お茶を濁した。

(参考記事)北朝鮮「民族最大の祝日」の直前、中国共産党ナンバー3に帰国された金正恩

 そして5月16日、プーチン大統領が、北朝鮮を無視するかのように、中国だけを訪問。そこで北朝鮮は、「それならもうロシアなんか知らん!」と、ヘソを曲げてしまったというわけだ。

 小国が大国を利用することもあるが、多くは利用されるし、翻弄もされる。金正恩委員長の心情を察すれば、「早くトランプが復活してほしい」というところではないだろうか。

■著者のその他の記事
中国、吠えまくりの「戦狼外交」から微笑みの「パンダ外交」へ急旋回の真意(2024.5.14)
北朝鮮「民族最大の祝日」の直前、中国共産党ナンバー3に帰国された金正恩(2024.4.17)
【あ然】韓国総選挙で与党惨敗、「長ネギ」が壊しかねない日米韓の協力体制(第231回)
【大地震】台湾政府が中国の救援申し出を辞退、実は甚大被害が出た「花蓮」は台湾有事の際の反攻拠点候補地(2024.4.4)
小林製薬「紅麹」、台湾でも健康被害報道、崩壊しはじめた“日本ブランド”(2024.3.31)
習近平主席もプーチン当選を真っ先に祝福、歴代中ロ首脳が交わした「祝電」に透けて見える〈蜜月関係〉の裏の本心(2024.3.20)
全人代閉幕、垣間見えた権力闘争の「履歴」と新たな「萌芽」(2024.3.13)
【こぢんまり全人代】政府活動報告もサラリ、首相の記者会見も「開催なし」の異例ずくめ(2024.3.6)
【大谷結婚】野球人気が低い中国で、お堅い「環球時報」までもが大谷翔平にクギ付けの理由(2024.3.2)
>>もっと読む