世界各地でビジネスを展開し急成長を続けるSHEIN(写真:AP/アフロ)世界各地でビジネスを展開し急成長を続けるSHEIN(写真:AP/アフロ)

米国でIPO申請を行ったと報じられている中国系ファッションネット通販のSHEIN(シーイン)。若者を中心に絶大な人気を集める同サイトだが、他ブランドとの著作権問題や新疆ウイグル自治区での労働力搾取といった問題も指摘される。2024年にも上場の可能性があるとの見通しがあるが、果たして無事に上場を迎えられるか。

(杉原 健治:フリーライター)

世界150カ国以上にユーザーを抱えるSHEIN

 ファストファッションECサイトのSHEINが、非公表の形で米規制当局にIPO(新規株式公開)申請をしたと話題になっている。SHEINは格安でファッションアイテムなどが購入できることで若者の高い支持を得た一方、他ブランドとの著作権トラブルといった負の側面も指摘されてきた。

 SHEINはシンガポールに本拠を置き、店舗を持たずにオンラインのみでの販売をおこなうECサイトだ。AIなど最先端の技術を活用し、生産・流通を最適化。在庫を極限まで削減することで、幅広い商品をリーズナブルに提供している。

 創業者の許仰天(クリス・シュー)氏は、中国・山東省の出身。大学を卒業後、オンラインマーケティングの企業に就職した。その後2008年に、友人たちとSHEINの前身企業を南京にて立ち上げることになる。ウエディングドレスの越境ECで資金を得たのち、女性服全般にカテゴリーを広げ、現在のSHEINの形に至った。

 2020年12月には日本語サイトを公開し、若者の間に徐々に浸透。2022年には「東京ガールズコレクション 2022 SPRING/SUMMER」にも出展している。同年11月には原宿にショールームをオープンするなど、日本での認知度も着実に高めている。

東京・原宿にあるSHEINのショールーム「SHEIN TOKYO」。2022年11月撮影(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)東京・原宿にあるSHEINのショールーム「SHEIN TOKYO」。2022年11月撮影(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 売り上げも好調で、2022年の売上高は227億ドル(約3兆2000億円)に達したと報じられ、2025年の売上高を585億ドル(約8兆3000億円)にするという目標も掲げている。ZARAを運営するインディテックス(スペイン)の2023年1月期通期の売上高が325億6900万ユーロ(約5兆円)と、直近では及ばないものの前年比ではSHEINが約50%増、インディテックスは約18%増と、近く逆転するとの見方も出ている。なお、ユニクロ、ジーユー、セオリーなどを展開するファーストリテイリングのグループ売上高は2兆7665億円(2023年8月期)だ。

日本国内でも若者から圧倒的な支持が

 日本国内での展開を見ると、すでに若年層には驚くほど受け入れられているようだ。LINEリサーチが全国の男女を対象におこなった調査によれば、SHEINに対する認知度は全体で5割弱という結果だった。10~20代の女性においては8割を超える人々が「SHEIN」を知っており、10代女性の5割超はサイトの利用経験もあると回答した。

SHEINのスマホアプリ(写真:當舎慎悟/アフロ)SHEINのスマホアプリ(写真:當舎慎悟/アフロ)

 SHEINでは、SNSを活用したマーケティングを積極的におこなっているのも特徴だ。公式アカウントでの発信はもちろん、海外の有名アーティストなどさまざまなインフルエンサーと契約することでインターネット上での話題作りに成功。若年層を中心に世界中のユーザーへアピールしてきたことで、今や米国をはじめとした150カ国・地域以上で利用されるほどの大手サービスに成長している。