雰囲気ではなく言葉で同意する時代が来たのだろうか(写真:Mladen Zivkovic/Shutterstock.com

性行為の際、お互いに同意があったかどうかを記録しておくWEBサービス「キロク」の正式版が2023年12月にリリースされた。同年7月に性犯罪に関する刑法が改正されたこともあり注目された「キロク」だが、その賛否にはなお様々な声があるようだ。

(杉原 健治:フリーライター)

性的同意サービス「キロク」とは

 性行為をおこなう際、お互いの同意があったことを証明できる「キロク」というWEBサービスが登場した。弁護士が監修したというこちらのサービス、性行為の同意書がデジタル作成できる画期的な試みだが、果たして世の中に浸透するのだろうか?

「キロク」はもともとアプリとして2023年8月にリリース予定だったが、「強制的にボタンを押されたら意味がない」といった指摘を受け12月に延期。48時間以内なら同意の取り消しができる機能を追加するなどの措置をおこない、アプリだけでなくメールアドレスからもログイン可能なWEBサービスとして、12月14日に正式リリースとなった。

 実際に使用する際は、弁護士監修による10項目の同意項目をチェックする。例えば、「相手から暴力を振るわれたり、言葉で脅されたりしていませんか?」「多量のお酒を飲んでいたり、判断力に影響が出るほどの薬を服用したりしていませんか?」といったもので、さらに「相手について人違いをしていませんか?」といった項目もある。

弁護士監修による同意項目のうち1〜5番目の項目(6〜10番目の項目は次ページ参照)
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 すべて項目について「上記について確認しました」というボタンをチェックし、確認完了のボタンを押すと画面にQRコードが表示される。これを相手にスマホで読み込んでもらい同意が完了となる。

「不同意性交等罪」の切り札になる?

 キロクが注目された背景として、2023年7月に施行された性犯罪の刑法改正が挙げられる。改正以前は暴行や脅迫によっておこなわれた性犯罪を「強制性交罪」、心神喪失や抗拒不能でおこなわれたものを「準強制性交罪」と分類していた。改正後はそれぞれ個別に分かれていた罪を「不同意性交等罪」に統一した(「強制わいせつ罪」と「準強制わいせつ罪」は「不同意わいせつ罪」に統一された)。

 今回の刑法改正によって、「同意しない意思の形成、表明、全う」することが困難な状態でおこなわれた性行為は「不同意性交等罪」が成立する可能性がある。「不同意」とされる内容は、改正前の暴行や脅迫・心神喪失のほかに「恐怖・驚がくを与える」ことや「経済的・社会的地位の利用」、「虐待」などを含めた8つの項目がある。政府は性的同意を周知するための積極的に広報活動を展開するなど周知に努めている。

【刑法改正に関する参考リンク】
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html
https://www.gender.go.jp/kaigi/sonota/pdf/kyouka/06/04.pdf

 性犯罪が起こった場合、双方に同意があったかどうかを立証することは今まで難しかった。しかし「キロク」でのデジタル同意書があれば証拠のひとつとして認められる可能性もある。