少子化・高齢化・晩婚化ニッポン。迫りくる老い、平凡でストレス過多の日常、そんなおじさんの心に舞い降りた恋は、果たして地獄か楽園か。さまざまな中高年男子の恋模様を通して、人生100年時代の恋について考えてみよう。
(若月 澪子:フリーライター)
※若月澪子さんの新刊『副業おじさん』もよろしければお読みください!
戦争を始めるには大義名分が必要だ。
ロシアのプーチン大統領は「虐げられたロシア人を救う」と言ってウクライナに侵攻し、イスラエルのネタニヤフ首相はハマスの堪忍袋が切れたのを利用してパレスチナに攻め入った。国内世論と国際社会を味方につけるには、「錦の御旗」は欠かせない。
同じく不倫にも大義名分が必要である。
一般的な不倫ドラマや不倫小説では、だいたい主人公のパートナーはイジワルで嫉妬深く、それによって主人公の不倫が正当化される筋書きだ。
たとえば、渡辺淳一の『失楽園』では、ヒロインの夫は理屈っぽい生真面目な医師で、読者は「話の通じないおじさんが旦那なら、ヒロインが不倫してもしょうがない」と納得する。
理論武装が必要なのは、戦争も不倫も後ろめたさがあるからだ。しかし、現実には「大義」などない。単に「おっぱじまる」。
「妻以外の女性と付き合うのは、男のたしなみだと思っています。付き合い始めた当時はちょうど仕事が軌道に乗り、次は女かなという時期で」
そうのたまうのは、自分よりも20歳近く若い女性と15年も不倫関係にあるAさん(55)。建築会社を経営するAさんは、小ぎれいな黒Gパン、ブランドものの黒Tシャツから上腕二頭筋を見せつけるおじさんだ。妻と二人のお子さんがいる。
Aさんが愛人のメグミさんと知り合ったのは、とあるボランティアサークル。何のボランティアなのかは教えてくれなかった。
ちなみに、筆者が取材する不倫既婚者は、なぜかボランティアを通じて知り合ったというケースが多い。いいことをすると、今度はルール違反をやりたくなるのか。人間は矛盾の塊だ。