JBpressの人気連載「おじさんの副業」が朝日新聞出版から書籍化された。タイトルは『副業おじさん 傷だらけの俺たちに明日はあるか』。中高年男性を取り巻く雇用環境が激しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、逞しくもどこか哀愁の漂う姿を描いた作品だ。出版を記念して、担当編集者が著者の若月澪子さんに話を聞いた。(聞き手:篠原匡、編集者・ジャーナリスト)
──連載の書籍化、おめでとうございます。
若月澪子氏(以下、若月):ありがとうございます。今も私でいいのかな、ととまどっています。
──書籍では、中高年の副業に「これでもか」と言うくらいにフォーカスしていますが、なぜおじさんの副業に関心を持ったのでしょうか。
若月:そもそもの話をすると、今から2年ほど前に、ある大学入試の試験官のバイトをしたんです。ちょうど、いろいろな仕事をしてみようと思った時で。基本、主婦なので。
そうしたら、現場のバイトの大半がスーツ姿の50代、60代のおじさんだったんです。本当にもうビックリで。学生や主婦が多いのかな、と思い込んでいたから。週末の日中に、スーツを着たおじさんが試験官をやっていることに、単純に驚いた。それが一つ。
もう一つは、私の父の思い出です。試験官の現場では、派遣会社の若い社員がバイトのおじさんにいろいろ指示を出していました。「はい、ここに座ってください」「××時まで外には出ないでください」って。おじさんがおとなしく言うことを聞いて、健気に働いていた。
実は、今から何十年も前、私の父は50代の頃に勤め先からリストラされているんです。中高年が仕事を探すのは大変だということは父の経験から知っていました。それで試験官バイトをするおじさんの姿が父と重なり、とても切ない気持ちになったのです。
みなさんどういう動機で、どんな思いでこうしたバイトに取り組んでいるんだろう。そんなきっかけで取材を始めたら、リーマンショックやコロナで生活が苦しい、給料が上がらない、セカンドステージの不安など、さまざまな理由で副業を始めていることがわかって。それをJBpressさんが「書いていいよ」という話になり。
──いろいろな中高年に話を聞いて感じたことはありますか?