原子・分子を形作る原子核の周りを飛び交っている電子は、どれだけ動いても熱など全く出さず動き続けている。
こうした存在を量子力学的粒子と呼び、その挙動を示すものを「波動関数」と呼びます。
ここでは「量子力学的な粒子はほとんど超伝導」という事実のみ、確認できれば十分です。
最も小さく軽い原子である水素、つまり陽子1個の周りを電子が1つ回っているだけのシンプルな陽子が2個集まって「水素分子H2」になっても、周りの電子は熱を出したりせず永久に回り続けている。
仮にこれが「H4」とか「H10」みたいに、水素がたくさん集まった巨大分子みたいになったら、その周りを飛ぶ量子力学的粒子である電子は熱を発したりしなさそうです。
では、大変な高圧の下で「水素の氷」を作ってみたら?
つまり「H100」とか「H10000」「Hたくさん!」みたいな固体水素の結晶ができたなら?
水素は、実はナトリウム、カリウムなどと同様、アルカリ金属の仲間で、結晶化すれば金属の性質を持つことが期待されます。
固体金属水素の超伝導可能性は英国~米国の物性物理学者ニール・アシュクロフトが1968年に指摘して以来、検討されています。
ともかく水素は小さいので、単体で扱おうとしても逃げてしまう。
そこで、水素化物のハイドライドという形で、一定の場所に水素を捕まえておいて、それら全体を圧縮することで波動関数がつながり、巨視的な量子力学的粒子のようなものができないか・・・。
これが、超伝導の超高圧からのアプローチの本筋で、今回の報道もその進捗の一つにほかなりません。