AIの開発は日本が草分けだった

 7月4日、東京大学安田講堂に岸田文雄首相以下、西村康稔経産相、松本剛明総務相と3閣僚が揃って「東大×生成AI」シンポジウムが開催されました。

 我が国として生成AIこと、大規模言語モデルシステム(LLM)への取り組みが広くアナウンスされました。

 西村大臣やソフトバンクの孫正義さんなどが登壇する同日の模様は動画 がアップされていますので、ご興味の方は是非ご覧ください。

 こうした総論を受けて最初の東大発、実際にLLMで開発に携わるメンバーが登壇する7月24日、無料公開イベント「生成AI以降の企業戦略と人材育成、法理と倫理」の案内をリンクしておきましょう。

 東京大学とミュンヘン工大AI倫理研究所の戦略的パートナーシップ・プロジェクト主催の「哲学熟議」。

 AIの父、甘利俊一教授と、メタ(Meta)が出資してミュンヘン工大に設置されたAI倫理研究所長、クリストフ・リュトゲ東京大学客員教授がキーノート・トークで登壇、ラウンドテーブルで生成AIを巡るグローバルな問題状況を交通整理します。

実は日本が発信源の「ニューラルネット」

 さて、今回もご登壇されるAIの父、甘利俊一先生は、このコラムでも幾度かご紹介しました。

 実は「ディープラーニング」に対して極めて批判的なスタンスで知られています。

 そもそも、読者の皆さんは今日のAIの原点「ニューラルネット」を理論も実装も日本発のパイオニア的取り組みが支えてきた事実をご存知でしょうか?

 今日AIと呼ばれる、人間の脳にモデルを求めた人工知能システムの原点は第2次世界大戦中の1943年、米国のウォーレン・マカロックとウォルター・ピッツによる数理的脳モデルに端を発します。

 第2次大戦後の1958年、米国の若き心理学者フランク・ローゼンブラット(1928~71)が提案した「パーセプトロン」が牽引する形で「第1次AIブーム」が沸き起こります。

 ここで今日のニューラルネットの原点となる「確率勾配降下法」を提出したのが、当時31歳の甘利俊一先生(1936ー)でした。

 甘利先生は7月24日もキーノートで登壇されます。甘利先生のお人柄が分かるリンクを一つ付けておきましょう。

 2017年「人工知能」誌に寄せた原稿「もうちょっとだよなーディープラーニング」。

 本稿の以下の記述も、基本この甘利先生の論旨と同じものです。