日本の民放テレビ番組が、酸素ボンベの推定残量をもとに、おかしなサスペンス仕立てで放送していたらしいことは後になって知りました。
事態の本質と全く関係がなく、合理的な科学リテラシーにも反し、単に視聴率を当て込んだ困った放送と指摘せざるを得ません。
温度や圧力が変わると、物質の存在形態は大きく変化します。
また、人間が健康に生存するためには、体温が34度を下回ったり、41度を上回ったりすることを避けねばなりません。
酸素ボンベ以前に深海底の水温と圧力を想起した時点で何が起きるか、高校生程度のサイエンスでも、きちんと基礎を理解していれば、ほぼ瞬間的に答えの察しはついてしまいます。
超高圧下「固体水素」の超伝導なら当り前
ヒトを含む、あらゆる生物の命は極めてデリケートで、ほんの少し環境が変わっただけでも、命脈を保つのは容易なことではありません。
これに対して無機物は事情が異なり、宇宙創成初めの3分間から太陽系の終わり、銀河の終焉まで、物質粒子は悠久の寿命を誇ります。
超高圧下で実現する超伝導については、ある意味当たり前のことと言えるかもしれません。
今回ロチェスター大学のグループが発見したと主張するのは窒素ドープ水素化ルテチウムという物質ですが、超伝導の本質は電子にあってルテチウムは電子に舞台を与える役割しか持っていません。
餅屋は餅屋ですので、非常に荒っぽいですが、小谷君の記事が触れなかった物性物理を補いましょう。
超伝導というのは何も特殊なことではありません。
電気が流れているはずなのに、熱も出ないし止まりもしない永久電流は、私たちの体の中にも無数存在しています。