水の圧縮率は摂氏20度で1平方センチあたり1キログラムの重さがかかったとき、4.482×10のマイナス5乘(cm2/kg)つまり0.01%程度にしかなりません。

 深海底の水温を正確に知りませんが、凍っていないのだから0度よりは高く、そこで仮に300気圧かかっても1パーセント程度しか圧縮しない。

 しかし、細胞器官例えば心臓、血管、眼球、脳など人間を形作る器官ははるかにデリケートですから、3気圧程度かかっても潜水病を発症しますし30気圧では生きていられません。

 いま300気圧、あまり生々しい表現は取らないように、するめとかアジのタタキとかなめろう、あるいははんぺんやかまぼこなどをつくるすり身とか、魚介類加工品の名を挙げ、話を先に進めます。

 また、テレビの動画で「爆縮の結果瞬間的に大変な高温になる」と解説する人がありましたが、一概には言えないように思います。

 計算上はそういう話もできますが、何しろ周りは莫大な深海の水という低温熱浴が取り囲んでおり、どのような温度状況かは検討しなければ何とも言えない。

 少なくとも人間の体が瞬時で煮えてしまう可能性は高くないように思います。水の比熱は大きく、タンパク質が変成するほどの熱収支があったとは考えにくい。

 超高圧で明らかに圧縮されるのは船内の空気でしょう。この際、船内の人間の体内にある空気も同様であることに注意せねばなりません。

 肺は瞬時に爆縮、胸郭全体も厳しいことになる可能性があり、それは咽頭・喉頭などの頸部や口腔も同様なので、首や下顎には大変なインパクトがかかったと思われます。

  初回稿では、あえて詳細な表現は避け、これらをまとめて「バラバラ」とのみ記しました。

 嫌な表現でしたが、報道では「引き上げられたタイタンの残骸」の中から「体の一部と思われるもの」が確認されたと表現されていました。

 元来の発表では“Presumed human remains”(人間の遺体と推定されるもの)と表現されており、原型をとどめていないことが分かります。

 しかし、このようなことは水深2キロと聞いた次の瞬間、少しでも物理や保険物理をかじったことのある人間なら反射的に分かる話でしかありません。