5月31日、政府関係者とのビデオ会議に臨むプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

ウクライナ軍が仕掛けたドローン攻撃

[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]ロシア国防省の発表によると、ウクライナ軍が5月30日朝に8機の無人航空機(ドローン)でモスクワを攻撃、うち5機は撃墜され、3機も電子戦システム(信号妨害技術)で制御不能に陥り、目標を外した。5機を撃ち落とした地対空ミサイルシステム「パーンツィリ-S1」は今年初めモスクワ中心部に設置されたという。

 英BBC放送がインターネット上に出回っている複数の動画を確認したところ、攻撃に使用されたドローンは前方にプロペラのついたウクライナ製UJ-22とは翼や車輪の位置、機体のデザインが異なっていた。翼の幅から「飛行距離は数十から数百キロメートルの可能性がある」(西イングランド大学のドローン専門家スティーブ・ライト氏)という。

 BBCは今年、ロシア国内とウクライナのロシア軍占領地域で起きた60回超のドローン攻撃を調査。5月3日未明のドローン2機によるクレムリンの大統領官邸攻撃疑惑も含まれており、米紙ニューヨーク・タイムズは「米当局はウクライナ特殊軍事部隊か情報部隊によって計画された可能性が高いとみている」と報じている。

 攻撃のほとんどはウクライナ国境に近いロシアのブリャンスク、ベルゴロド両州やロシア軍が軍事基地化しているクリミア半島に集中している。ターゲットは石油施設とエネルギーインフラ、そして航空機だ。「春の反攻」を成功させるための「地ならし(シェーピング・オペレーション)」の一環だ。