ニューヨークで中国の「秘密警察」設立に協力していたとして4月17日に逮捕された米国籍をもつ盧建旺容疑者。同日、保釈金25万ドルを払って釈放された(写真:ロイター/アフロ)

(山田敏弘・国際ジャーナリスト)

 中国の国外に設置された「秘密警察」がまた問題になっている。というのも、アメリカのニューヨークで4月17日、秘密の警察拠点を運営していたとして、中国人2人が米FBI(連邦捜査局)に逮捕されたからだ。

 2人は盧建旺容疑者(61)と陳金平容疑者(59)で、どちらもアメリカの市民権を持っていた。2人は中国の福建省出身者向けのイベントを開催する団体を運営していた。

 アメリカでは外国の政府のためにアメリカ国内で仕事をする場合は司法省に「外国エージェント」として登録することが決められているが、それをしないで、中国政府のために暗躍していたとされる。

少なくとも53カ国に102カ所の拠点

 中国が世界各地に設置しているこうした警察拠点については、スペインの非営利組織「セーフガード・ディフェンダーズ」が2022年9月に公開した「海外110」という報告書によって広く知られることになった。その報告書には、日本を含む世界53カ国に、少なくとも102カ所もそうした拠点があると記されている。

ニューヨークのチャイナタウンにある「秘密警察」の拠点とされる「米国長楽協会」(美国長楽公会)のビル(写真:ロイター/アフロ)

 これは明らかな主権侵害で、各国の政府が非難する事態になった。中国政府はこうした警察拠点を各地に設置して何をしているのか。そして日本にもある拠点の実態はどういうものなのか。