都内にある「秘密警察」拠点と国会議員

 そしてこの中国の警察拠点は、日本にも存在している。セーフガード・ディフェンダーズの報告書で確認できるのは2カ所で、一つはホテルになっている東京都千代田区にある十邑会館と、もう一つは江蘇省南通市に関連する「出先機関」だ(報告書では場所はわからないと見られているが、福岡県にあると見られている)。

 さらに問題なのは、千代田区の十邑会館を拠点としている日本福州十邑社団聯合総会は、日本の現役国会議員である松下新平参議院議員を高級顧問に就任させているこことだ。

 十邑会館が紹介している2020年7月8日に行われた就任の「授与式」のリポートには、「7月8日下午,日本福州十邑社团联合总会高级顾问授聘仪式在东京十邑会馆顺利举行,现任日本自由民主党财务金融部会长、参議院議員松下新平先生受聘为我会高级顾问」とある。

 翻訳すると、「7月8日午後、日本福州十邑社団聯合総会の高級顧問任命式が東京の十邑会館で滞りなく行われ、現自民党財務金融部長で参議院議員の松下新平氏が、高級顧問に任命されました」ということらしい。

 参議院のHPに掲載されているプロフィールによれば、宮崎県選出の松下議員は、「自民党人事局長、自民党外交部会長、自民党財務金融部会長、参議院政府開発援助等に関する特別委員長、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員長。参議院政治倫理審査会会長」と要職にある。そんな影響力のある議員が、日本にある中国の警察拠点に深く関係しているとなれば国民を不安に陥れるので、きちんと説明を行うべきではないだろうか。

 イギリスやアメリカでも、現役の国会議員が中国のスパイ工作の餌食になっている。そうした工作には、国家安全部(MSS)や中国共産党の情報機関である統一戦線工作部(UFWD)が関与している。公安や検察などに加えて、こうしたスパイ機関が海外で行われている一連の工作に関与しており、その規模がかなり大きいことがわかる。

 さらに日本では、すでにわかっている2カ所以外にも複数か所、中国の警察拠点があると指摘されており、公安警察なども警戒を強めている。

 最後になるが、今回のニューヨークでの摘発で、特筆すべき問題がある。こうした活動の中で、警察やスパイのように暗躍している中国当局者が、日本でも広く使われているあるアプリを悪用していることだ。それは、オンライン会議サービスの「Zoom」(ズーム)である。