スウェーデンの若年層には不満が鬱積している(写真:GagoDesign/Shutterstock.com)
世界中から注目を集め、羨望の的となってきたスウェーデンの「北欧モデル」が今、内側から崩れようとしている。かつてこの国は、高負担・高福祉を基盤に「理想的」とされる社会システムを誇っていた。しかし、1997年から2010年ころに生まれた、いわゆるZ世代にとって、その理想郷は自由と希望を奪う重圧へと変質している。
(松沢 みゆき:在スウェーデンのジャーナリスト)
失業時でも給与の70%を保障、「完璧な福祉国家」だったが…
筆者が1997年に日本語教師として赴任した際、スウェーデンはまさに黄金時代にあった。スウェーデン語教室・大学・大学院を経て結婚し、3人の子供を出産し育てる過程で、教育費や医療費の負担は一切なかった。学生時代は奨学金と学生ローンで、普段通りに生活できた。徹底した男女平等教育を受けて育った夫は、家事・育児を半分以上こなした。
私の国籍は日本のままだが、この国の住民は、「男でも女でも、何歳でも肌が何色でも、どの国・地域の出身でも、カネを持っていてもなくても、とにかく社会の成員は絶対に全員が完全に平等なのである」という力強い理念に助けられ、その恩恵を最大限に受けてきたのだ。
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1990年から2010年代まで、スウェーデンのGDP成長率はおおむね3%以上を記録し、EU平均や日本を凌駕していた。無償の教育と医療、世界最長の育児休暇。失業時でも給与の70%が保障される手厚いセーフティーネット…。国別の幸福度調査では上位にランクされ、男女平等指数でも常に上位に位置する。「完璧な福祉国家」だった。
このシステムは、「誰にも等しくチャンスが与えられる社会」「努力が報われる理想社会」であり、それどころか「働かなくても生活できてしまう」むしろ行き過ぎた福祉天国が体現されていた。私自身も含め1965年から1980年頃に生まれた、Z世代の親にあたるX世代がこの時代の恩恵を受けた。
1990年代〜2010年代のGDP成長率(出所:World Bank)
上のグラフから、この時期、スウェーデンはEUや日本を上回って成長しているのがわかる。EU平均は概ね1〜3%レンジで推移し、日本は1990年代以降、低成長となり、いわゆる「失われた30年」に突入していた。
しかし、Z世代が社会に出る2020年代に入って状況は一変した。この世代が直面しているのは、親世代とはかけ離れた過酷な現実である。