4月13日、国家防衛機密を承認なく移動、保持、転送した疑いで逮捕された空軍州兵のジャック・テシェイラ容疑者(提供:Air National Guard/ZUMA Press/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

オタクの能天気さと国家安全保障の物々しさ

[ロンドン]米国家安全保障に関わる最高機密を不正に持ち出し、保持、送信したとして米マサチューセッツ州の空軍州兵ジャック・テシェイラ被告(21)を逮捕したと4月13日、メリック・ガーランド米司法長官が発表した。14日起訴されたテシェイラ被告はゲーマーと銃オタクのオンライングループの管理者だった。

 自宅のデッキで本を読んでいたテシェイラ容疑者は赤いショートパンツにTシャツ姿で、武装した米連邦捜査局(FBI)の捜査官に連行された。自分がしでかした事の重要性すら理解できない能天気なオタクと国家安全保障を守る物々しさ。ちょっと間の抜けたコントラストが今回の漏洩事件の特異性を物語る。

 テシェイラ容疑者は2019年、軍に入隊し、オーティス空軍州兵基地に配属された。米空軍通信システムの技術支援スタッフだった下級州兵がどうして米国の「最高機密」を入手できたのか。米紙ワシントン・ポストによると、21年以来、最高機密のクリアランスを保持していたテシェイラ容疑者は「合同世界情報通信システム(JWICS)」にアクセスできた。

 持ち出した数百の情報にはウクライナの防空網の穴、世界のリーダーのハイレベルな会話に関するヒューマン・インテリジェンスの要約、米国がスパイ活動に使用している高度な衛星技術に関する情報、イランや北朝鮮、英国、カナダ、韓国、イスラエルなど同盟国と敵対国に関する情報も含まれていた。