(国際ジャーナリスト・木村正人)
機密文書漏洩、背後にロシアの関与説
[ロンドン]ウクライナ戦争に関する米国防総省の機密文書がソーシャルメディアで拡散している。
米紙ニューヨーク・タイムズは「漏洩文書はロシア軍の状況を厳しく評価するとともに、ウクライナ軍も悲惨な状況にあることを示唆している」と報じている。皮肉なことに米国は、秘密主義に徹するウクライナ軍よりロシア軍の内部情報に精通していると言われる。
漏洩文書によると、ロシア軍は18万9500人~22万3000人の死傷者を出し、うち戦死者は最大4万3000人。2月時点でウクライナ軍の死傷者は12万4500人~13万1000人で、戦死者はうち最大1万7500人とされる。米国はこれまで、ロシア軍の死傷者を約20万人、ウクライナ軍のそれを約10万人と見積もっていた。
オープンソース・インテリジェンスを使ってロシアが撒き散らす嘘を見破り、発信し続けている「ベリングキャット」のトレーニング&リサーチ担当アリック・トーラ氏は「『最高機密』と書かれたものを含む文書の一部はロシアのウクライナ侵攻に焦点を当て、他の文書は南シナ海に関する英国の潜在的な政策などに関する詳細な分析を行っている」と指摘する。
機密文書は3月までのロシアのウクライナ侵攻に関する出来事を詳述し、分析しているが、誰がリークしたのかは分からない。3月上旬、ゲーマーに人気のメッセージング・プラットフォームに最初に投稿され、一部は「ベリングキャット」の調査で粗雑に編集されていることが判明している。
一部では、ロシア政府または親露派グループが機密文書入手に関与し、ロシア軍の被害を少なめに改ざんしたのちにSNSを通じて拡散させた、とも囁かれているが真偽は不明だ。米国防総省と米司法省は調査に乗り出した。