ロシア大統領府子どもの権利担当委員のマリア・ルボヴァ=ベロヴァ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

「プーチンは個人の刑事責任を負う」

[ロンドン]国際刑事裁判所(ICC、123カ国加盟)は17日、ウクライナの被占領地域からロシアへ子どもを強制移送し養子縁組をした戦争犯罪で、露大統領ウラジーミル・プーチンと露大統領府子どもの権利担当委員マリア・ルボヴァ=ベロヴァに逮捕状を出した。

 ICCは「プーチンが個人の刑事責任を負うと信じるに足る十分な証拠が存在する」と強調した。

 ポーランド出身のピョートル・ホフマンスキーICC所長は「被占領地の民間人を他国の領土に移すことは国際法違反。子どもたちはジュネーブ条約で特別な保護を受けている。将来の犯罪を防止するために逮捕状発行を明らかにした。裁判官は検察官が提出した証拠を検討した結果、信頼できる申し立てと判断した」と述べた。

 戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドを訴追することを目的としたICCにロシアは米国、中国、ウクライナと同様、加盟していないので、プーチンとルボヴァ=ベロヴァがロシア国内で逮捕されることはない。それにICCの公判は被告本人の出席が必要(いわゆる「欠席裁判」は認められていない)なので、勝手に裁かれることもない。

 ただ、プーチンとルボヴァ=ベロヴァはロシア国外のICC加盟国に渡航すれば逮捕される可能性が高い。プーチンはICC加盟国への外遊をためらわざるを得なくなるだろう。

プーチン大統領。3月16日、ロシア産業企業家同盟の会合に出席した際の一枚(写真:代表撮影/AP/アフロ)