「破壊しつくしてから占領」というロシアの手法に市民からの強い反発
――ロシアによる同盟国ベラルーシへの戦術核兵器の配備をどう見ていますか。
ロペス これは「張り子の虎」だ。ロシアがウクライナや西側諸国に対して核攻撃を行うことはないだろう。そのような行動の結果、北大西洋条約機構(NATO)が集団防衛を定めた第5条を発動し、ロシア軍は破壊されることになるだろう。
プーチンは核のボタンを押す際、軍の支持を必要としている。
――ウクライナにおけるロシア軍の現状とその戦略・戦術をどう評価していますか。
ロペス すべてを破壊してから占領するという戦略は失敗している。ちょうどアフガニスタンにおける米軍の対反乱作戦(counter-insurgency)のように。なぜかというと占領地域の市民がロシアやその軍隊を支持していないことに気づかなかったからだ。
民間インフラを圧倒的に破壊するロシア軍のシリア・モデルはウクライナ戦争では占領地域とロシアで強力なパルチザン・キャンペーンに見舞われている。
大規模な火力支援と1万発の砲撃、ハイテクミサイルの使用により、NATOのウクライナへの完全な後方支援という目標が達成されている。武器、弾薬、技術はウクライナに流れ込んでいる。
ロシア側は制裁と戦場での大きな損失により戦術的な需要に追いつくことができない。もしウクライナ軍が反攻に転じた場合、ロシア軍はウクライナ軍の新戦力部隊を止めることは難しい。
多くのロシア軍部隊が戦力不足のため、ロシアにとっての選択肢は戦術的撤退か、全滅しかないだろう。
【マーク・ロペス氏】
米陸軍で1974年から30年間、機甲と空挺の任務につき、イラクやアフガニスタンにも従軍。そのあと米民間警備会社を経営、アフガンに継続して関わった。2014年から4年間、ウクライナ軍に現地で爆発物探知や戦闘外傷救護を指導した。21年8月にはアフガン脱出作戦を支援。昨年5月から外国人志願兵(ウクライナ軍少佐)として主に戦闘外傷救護を指導する。