(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
岸田文雄首相が衆院和歌山1区の補欠選挙の応援演説に訪れた和歌山市の雑賀崎漁港で、聴衆の中から筒状のものが投げ込まれ、爆発する事件が起きたのは、15日の午前11時30分頃のことだった。投げた木村隆二容疑者(24)は、すぐそばにいた漁師や警察官などに取り押さえられ、威力業務妨害で現行犯逮捕された。首相は避難して無事だった。
安倍晋三元首相の襲撃事件から9カ月。またしても選挙の応援演説を、しかも今回は現職の首相を狙った卑劣な事件が、民主主義の根幹を揺るがすものであることは言を俟たない。
通り魔事件がそうであるように、ひとつの衝撃的な事件が起きると、それに触発されて模倣する事件が起きる。おそらくは、安倍元首相の銃撃事件に影響されたのだろうが、そうだとすれば、動機はともかく安倍元首相を襲った山上徹也被告(42)が“パンドラの匣”を開けた罪は重い。
同時に安倍元首相の事件が、警察の要人警護の甘さを浮き彫りにしたように、今回も警護の不備を指摘したり、検証を求めたりする声がメディアから上がっている。
爆発物投てき事件の後も和歌山・千葉で遊説を続けた岸田首相
だが、現実の問題として、いまのような選挙活動で候補者や要人を暴漢から護るには無理がある。それは、現場に立ってみるとよくわかる。
岸田首相は事件に怯むことなく、その後も衆院補欠選挙の応援で遊説を続けた。事件のおよそ1時間後には、予定通りJR和歌山駅前に姿を現し演説。それから4時間後には衆院千葉5区の補欠選挙の応援でJR新浦安駅前広場に、さらにその1時間後にはJR本八幡駅北口で選挙カーの上に立った。私はその現場にいた。