1年半足らずのうちに国外にいる中国人23万人が「自発的に」帰国

 実は筆者は数年前から、アメリカの元情報機関の関係者らからこんな話を聞いていた。

「FBIやCIA(米中央情報局)など米情報機関は、アメリカで中国人が忽然と姿を消すケースがかなり増えているのを把握しており、これまでにかなり捜査を進めている。この問題について近く世界で問題提起をしていくことになる」

「海外110」の報告書によれば、中国公安部の副部長である杜航伟は、2021年4月から2022年7月までの間に23万人の在外中国人を「自発的に」帰国させたと述べているという。それ以外の期間を入れるとさらに帰国者は増えると考えられるが、言うまでもなく、他国で法執行のような活動をするのは主権侵害にも当たる。

 そして先の元米情報機関の関係者によれば、中国側の言う「自発的」というのは事実とは違うと指摘する。

「外国で中国人が中国当局によって『誘拐』されているケースもある。また中国人がこうした作戦の中でスパイとして協力させられることもある」

 中国のこうした活動の背景にあるのは、習近平国家主席が2014年に始めた汚職を一掃する「キツネ狩り」と呼ばれる作戦だ。汚職撲滅という名目で、習近平は150万人とも言われる公務員らをパージ(粛清)しており、それによって政敵を排除して自身の権力基盤を固めてきたとも言われている。