(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことを受けて、欧米を中心とする主要国はロシアに対して矢継ぎ早に経済・金融制裁を強化した。この一環で、主要国はロシアの主要行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除したが、その目的はロシアの貿易を停滞させ、経済活動を困難にさせることに置かれていた。
その目論見通り、欧州連合(EU)の2022年1〜11月期のロシア向け輸出額は前年同期比34.6%減と激減した。EUを中心とするヨーロッパからの輸入は、ロシアがウクライナに侵攻する前の2020年時点で総額の4割を占めていた。その輸出が34.6%減少したということは、経済・金融制裁に伴ってロシアの輸入が2割弱減少したことと同義だ。
これは、ロシアが30年近くをかけて構築してきたヨーロッパとの間の供給網(サプライチェーン)が寸断したことを意味している。特にロシアの場合、国内で完成品を作るためには、中間財や資本財などをヨーロッパから輸入する必要がある。この流れが停滞すれば、ロシア国内でのモノの生産に多大な悪影響が及ぶことは必至だった。
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他方で、ヨーロッパとのサプライチェーンが寸断されたことで、ロシアは中国を中心とする新興国との間で新たにサプライチェーンを早急に再構築するはずだという論者が少なからずいたようだ。
それでは、ロシアがウクライナに侵攻して以降、中国の対ロ貿易はどの程度拡大したのであろうか。中国の統計を用いて分析してみたい。