レオパルト2供与を躊躇する理由は何か
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの戦車支援をめぐって米国とドイツが正面衝突している。
ドイツ西部にあるラムシュタイン米空軍基地で1月20日、ロイド・オースティン米国防長官(軍人出身)などおよそ50か国の代表が参加して、ウクライナへの軍事支援について協議する会合が開かれた。
焦点となったのは、欧州各国が保有する攻撃力抜群のドイツ製戦車、「レオパルト2」(1両574万ドル=約7億4000万円)をドイツはじめ保有国がウクライナへ供与するかどうか、を決めることだった。
8回行われた会合でも結論は出なかった。
実は、ポーランドはすでに供与することを表明、フィンランドもドイツ政府の許可が得られれば、レオパルト2を供与するとしている。
レオパルト2は、ドイツ以外にポーランド、フィンランド、カナダなど15か国が保有しており、その数はあわせて2000両を超える*1。
*1=ドイツはこれまでレオパルト2を3600両製造し、328両保有、ポーランド347両、ギリシャ353両、スペイン327両、トルコ316両、フィンランド200車両などがそれぞれ保有している。
(https://en.wikipedia.org/wiki/Leopard_2)
問題は、供与には製造国のドイツ政府の再輸出許可が必要で、ドイツが供与に踏み切るか、また、ほかの国の供与を認めるか、だ。
就任したばかりのドイツのボリス・ピストリウス国防相*2(中道左派・社会民主党、前内相)は1月20日時点では判断を先延ばしした。
*2=前任者のクリスティーン・ランブレヒト氏(社会民主党)は、ショルツ閣僚は男女同数にする「公約」で女性国防長官になったが、行政能力が問われたうえ、息子を軍用ヘリに搭乗させるなどでマスコミに叩かれ、辞任に追いやられた。ウクライナ侵攻直後にヘルメット5000個を供与すると宣言して国内外から批判を浴びたこともある。
攻撃力の高いドイツ製戦車レオパルト2のウクライナ供与については、ドイツは条件を付けてきた。
中道左派・社会民主党(SDS)のオラフ・ショルツ独首相は米国も主力戦車の「エイブラムズ」(1両621万ドル=約8億円)をウクライナに提供することを条件としていると、ドイツ紙に報じられたのだ(ドイツ政府は否定している)。
報道によると、ショルツ氏は1月17日のジョー・バイデン米大統領との電話会談でこう述べた。
「米国からエイブラムズが提供される場合に限って、レオパルト2を供与したい」
こうした動きに対してウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1月19日、憤りを隠さなかった。
「『別の誰かが提供するならば』と言ってためらっている場合ではない。ことは急を要するのだ」