今は昔、鈴木善幸の「軍事抜き同盟」論
岸田文雄首相は1月13日(日本時間14日未明)、ホワイトハウスでジョー・バイデン米大統領と会談した。
機密文書秘匿スキャンダルで足元に火のついたバイデン氏にとっては、マスメディアの追及をひと時、逃れられる口実になった「友、遠方より来たる」。「ありがたい盟友」だった。(もっとも、つかぬ間の一瞬ではあったが)
岸田氏にとっては、ワシントンを訪れるのは初めて。自民党ハト派集団「宏池会」の首相として訪米するのは、池田勇人、大平正芳、鈴木善幸、宮澤喜一各氏に次いで5人目だ。
鈴木氏が1981年5月、ロナルド・レーガン大統領(当時)との会談後、発表された共同声明には、「同盟」(Alliance)という言葉が盛り込まれた。
ところが鈴木氏は「同盟」には軍事的な意味合いは含まれないと発言。
これに対して伊東正義外相(当時、宏池会所属)は「当然含まれる」と反論して閣内不統一に陥った。伊東氏は辞表を提出した。
参考:鈴木首相訪米、共同声明における「同盟関係」についての参議院での質疑(データベース「世界と日本」=https://worldjpn.net/documents/texts/JPUS/19810513.O1J.html)
当時駐日米大使館に勤務していた元外交官B氏は感慨深げにこう述べる。
「あの頃に比べると隔世の感があるね。鈴木氏は明治生まれ。つらい戦争体験をしたはず。だから軍隊のグの字も嫌だったのだろう」
「それが今では国民の大多数が新安保3文書(国家安全保障戦略、防衛戦略、防衛費倍増計画)に賛成。宏池会どころか、反戦の公明党まで反対しない」
その岸田氏は、バイデン氏へのお土産として国家安全保障戦略など新安保3文書を引っ提げて首脳会談に臨んだ。これで3文書は名実ともに国際公約となった。