6回目の選挙でも過半数を取れなかったケビン・マッカーシー米共和党院内総務(1月4日、写真:ロイター/アフロ)

15回目でようやく過半数取る

 米議会の1月は鬼門だ。

 ドナルド・トランプ前大統領の怨念が議事堂をすっぽりと覆い、そのまま居座ってしまった。トランプ氏の「亡霊」が成仏できずに彷徨っている。

 2年前には暴徒化したトランプ支持者が米議会に乱入して死者4人を出した。米議会史上最悪の事態を招いた。

 トランプ氏が暴徒を教唆・扇動したという疑いはまだ晴れてはいない。そして今年。

 新議会の開会日、下院で多数党になった共和党から選出されるはずの下院議長候補、ケビン・マッカーシー院内総務(カリフォルニア州選出)が当選に必要な出席議員の過半数を取れなかったのだ。

 1月5日まで下院議長の椅子に座るものはいなかった。そして6日、15回目の選挙でマッカーシー氏は過半数を得てやっと下院議長に選ばれた。「反乱分子」の一部がマッカーシー氏に票を投じた。

 マッカーシー氏は、共和党の最高機関が指名した唯一の候補者だった。通常であれば、多数党候補が1回で当選、直ちに委員会人事、議事日程を決め、今頃は各委員会が山積みの懸案に手を付け始めていた。

 ホワイトハウスを失い、上院での多数決を民主党に奪われた野党・共和党は下院を舞台にジョー・バイデン政権と対決する構えだった。

 ところがその出鼻を党内反乱分子によって打ち砕かれた。

 開会日に1回の選挙で下院議長が選ばれなかったのは1923年以来100年ぶり。波乱の第118会期の前途を暗示する、容易ならざる幕開けだ。