米議会で演説するゼレンスキー大統領(12月22日、写真:ロイター/アフロ)

「歴史に残る名演説」と誉めそやすが・・・

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44) はテレビ中継の米議会演説で米国民の心を鷲掴みにしたかのように見える。

 翌日の全米各紙は一面トップでゼレンスキー氏の写真付きで大々的に報じた。

「ウクライナ国民は絶対的な勝利を勝ち取るだろう」「ウクライナは決して降伏しない」

「(連合軍がナチス・ドイツ軍を破った「バルジの戦い」に触れ)ウクライナ軍も同じように戦っている」

「あなた方のお金はチャリティ(慈善事業)ではなく、世界の安全保障と民主主義への資本投資だ」

https://www.washingtonpost.com/politics/2022/03/16/text-zelensky-address-congress/

 演説は約25分間。演説前には議員たちが「総立ち」となり、絶え間ない拍手で称えた。

 そしてゼレンスキー氏は、目論見通り20億ドルの地対空迎撃ミサイル「パトリオット」の供与を取り付けてワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地から(大統領が搭乗すれば「エア・フォース・ワン」と呼ばれる)大統領専用の軍用機で戦火のウクライナに戻って行った。

 トレードマークになっているオリーブグリーンの軍服用シャツにカーゴパンツ、ナンシー・ペロシ下院議長に手渡した戦場の兵士たちが走り書きしたウクライナ国旗。

 それらが「今議会で一線を退く民主党指導者(ペロシ下院議長)らが巧妙に演出したお芝居」(チップ・ロイ共和党下院議員)の小道具に使われ、米議会演説は大成功だったかに見える。

 米主流メディアは「1941年のウィンストン・チャーチル英宰相の米議会演説を彷彿させる」「歴史に残る演説」と持ち上げた。

 厳寒の中、水も電気もない生活を強いられているウクライナ国民の先頭に立って戦う「英雄」の悲壮な叫びだ、と「美談」に仕立て上げた。