囚人交換で釈放されたブリトニー・グリナー選手(2022年8月資料写真、写真:AP/アフロ)

ウクライナ侵攻後、2回目の囚人交換

 ウクライナ戦争をめぐって対立する米国とロシアが受刑者の身柄を交換した。ロシアによるウクライナ侵攻以降、米ロが囚人交換を行ったのは、2回目だ。

 4月27日、ロシアが収監していた元米海兵隊員のトレーバー・リード受刑者(30)、米国がコカイン密輸共同謀議で収監していたコンスタンチン・ヤロシェンコ受刑者 (53) をそれぞれ釈放(ともに健康状態が悪かったと見られる)して以来だった。

 米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2021年6月16日、ジュネーブでの対面首脳会談で、受刑者交換で原則合意していたとされる。

(プーチン氏が首脳会談の前々日、米NBCとのインタビューで「リード」の名前を挙げて「健康問題など人道上の理由から釈放に応ずる用意がある」と述べていた)

 米ロともに、この合意が副次的な効果を狙ったものではないと強調している。

 だが「ウクライナ問題で全面対決しているさなか、囚人交換を実現させたことが他の分野に一定の好影響を与える可能性は十分あるかもしれない」(ワシントン外交筋)。

 今回、プーチン氏が釈放したのは、麻薬密輸などの罪で禁固9年の実刑判決を受け、収監されていた米女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のブリトニー・グリナー選手(32)。

 WNBAでは最も背の高い選手の一人(2メートル5センチ)で、両腕は入れ墨だらけ。WNBAでも人気のスター選手で高額の収入を得ている億万長者だ。

 五輪では2回金メダルに輝いた米女子バスケットボール代表チームのメンバーで、逮捕時にはフェニックス・マーキュリーのセンターだった。妻のシュラルさんは弁護士だ。

 かつて人種差別反対を唱えて、試合前の国旗掲揚の際に宣誓を拒否したこともある。女子バスケットボール界では“問題児”だった。

 WNBAのオフシーズンにロシア・リーグでプレーするためロシアに出かけ、空港に着いた途端に大麻保持が発覚、拘束されてしまった。

 日本同様、麻薬に厳しいロシアに大麻を持っていくというのはあまりにも軽率だった。それにロシアはLGBTQが嫌いだし、黒人には偏見を持っている。二重三重に軽率だった。

 一方、バイデン氏がその見返りに差し出したのは、ビクトル・ボウト服役囚(55)だ。禁固刑15年の判決を受けて収監中だった。

 ウズベキスタン出身で、当初は軍の通訳をしていたが、ソ連邦崩壊事のどさくさに紛れて始めた武器密輸が高じて、所有するプライベート機で中近東や中南米のテロリスト集団に地対空ミサイルやロケット砲を売る世界的な「死の商人」となった。

 武器を入手したテロリストとの戦闘で多数の米兵や民間人が殺害された。米国情報機関はタイ当局の協力を得て、同服役囚をバンコクで拘束した。

 2005年公開の米映画「ロード・オブ・ウォー」(Lord of War)に登場する武器商人のモデルの一人とされる。ニコラス・ケイジ主演だ。

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