国家転覆のテロ容疑で逮捕連行される自称ハインリヒ13世(12月7日、写真:picture alliance/アフロ)

米独に棲みつく「ナチスの亡霊」

 ドイツ連邦検察は、国家の転覆などを企てたテロ組織に関わっていた疑いで25人を逮捕した。

 かつて世界を震撼させたナチスを生んだドイツに、反ユダヤ・反非白人の白人至上主義集団が生き残っていた。

「ナチスの亡霊」が彷徨っていたのだ。

 ナチスを撲滅し、新しく生まれ変わったドイツは、今や日本とともに先進民主主義国家陣営G7の最強メンバーだ。

 その国ではネオナチの極右がどっこい生きていた。オルフ・ショルツ首相はこう述べた。

「今回の逮捕でわれわれの国が強固なものだと分かったと思う。事件は未然に防いでおり、ドイツの民主主義が揺らぐことはない」

 確かに米国は、ドナルド・トランプ氏に唆されて(?)武装して首都ワシントンに結集した極右グループの議会襲撃を未然に防ぐことができなかった。

 それに比べれば、ドイツはまだしっかりしていた。

 だが、逮捕された25人の中に元貴族や合法的な極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)党」所属の前下院議員でベルリン地裁の女性判事、ビルギット・マルザックウィンケマン容疑者(58)や元ドイツ軍特殊部隊(KSK)将校やパラシュート部隊軍曹などがいたとなると、ドイツ連邦共和国に潜むダークサイドがちらついてくる。

 ドイツ検察庁の発表や報道によると、2021年11月までに結成された「帝国市民」(ライヒスビュルガー=Reichsbürger)は民主主義体制の打倒を目指す集団。

 国家を陰で操る「ディープステート(闇の政府)*1」にドイツ政府が支配されているという「陰謀論」を信じている。

 この「ディープステート陰謀論」は、まさに米国の「Qアノン」と共有するイデオロギーだった。

*1=ディープステートとは、政府、金融機関、産業界に秘密のネットワークを組織して権力を行使する隠れた政府のこと。それを頑なに信じるのが陰謀論だ。トランプ氏の場合、この勢力が自分を敵対視し、魔女狩りをしていると主張している。