米海軍の空母ロナルド・レーガン(資料写真、出所:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

 第2次世界大戦で日本軍を打ち破って以降、アメリカ海軍の主戦力は空母艦隊になった。現在に至るまで太平洋からインド洋にかけての戦域では空母艦隊こそがアメリカ軍事力が世界最強であることを象徴している、と多くの米国民や米軍関係者は自認しているし、日本を筆頭にアメリカ軍に頼り切っている国々でもそのように信じられている感が強い。

 実際に、今から四半世紀も以前になるが、中国が台湾の独立を志向する動きに対して軍事的圧力をかけたいわゆる第3次台湾海峡危機(1995~96年)に際しては、空母艦隊2セットを台湾周辺海域に派遣したアメリカ軍に対して、中国側はなんら抵抗の姿勢を見せることなく沈黙せざるを得なかった。

 この事件は、国際社会に米国の軍事力の強大さを再確認させるとともに、中国の軍事力の弱体ぶりをさらけ出してしまうこととなった。

海洋戦力の強化に邁進した中国、手が回らなくなった米国

 だが、この出来事をきっかけとして、中国は海洋戦力(海軍力、航空戦力、長射程ミサイル戦力など)を中心とした接近阻止戦力(アメリカ軍が中国沿岸海域に接近してくるのをできるだけ遠方海上で撃退するための戦力)の強化に邁進した。

 とりわけ中国が努力を傾注したのは、太平洋やインド洋から中国の“前庭”にあたる東シナ海や南シナ海に侵入してくる米空母艦隊を撃破する戦力の整備であった。とはいっても、1990年代後半の中国海軍や航空戦力はいまだに自衛隊にも対抗し得ないほど脆弱なものであり、米軍と衝突することなど思いも寄らないレベルであった。そのため、まずは近代的艦艇や航空機の取得や開発に着手し、海軍と空軍の強化に全精力を傾けた。