米国内で上がるウクライナ支援批判の声

 ウラジーミル・プーチン大統領を喜ばせているのは、ドイツの狼狽ぶりだけではない。今ロシアが重大関心を持って見守っているのは米国内の「変化」だろう。

 それは、ドイツが条件に出している米主力戦車「エイブラムズ」供与には御託を並べて躊躇していることに現れている。

 コリン・カール米国防副長官はこう述べている。

「25億ドル(約3200億円)の追加支援の中に『エイブラムズ』の供与は含まれていない」

「今回米国が供与する武器には甲装車『シャストライカー』90門、歩兵戦闘車『ブラッドレー』59車両、防空ミサイル・システム『ナサムス』用追加砲弾、移動式防空システム『アベジャー』8基が含まれている」

「同戦車はターボ・エンジン稼働で燃料費が嵩む。ウクライナには向いていない」

 また別の米国防総省高官はこうも言っている。

「エイブラムズ戦車のメンテナンスは複雑で、ウクライナ軍兵士が操縦を習得するにも時間がかかりすぎる」   

https://www.euronews.com/2023/01/20/ukraine-crisis

 一連の言い訳には裏がある。

 先の中間選挙で下院を共和党に明け渡したバイデン民主党の政局運営、とくに予算編成は多難だ。

 ウクライナへの追加軍事支援のめどは全く立っていない。

 共和党、とくに保守強硬派の間にはウクライナへの「ブランク・チェック(金額欄が空白のまま振り出された小切手)は認めない」という意見が台頭。

 軍事費を審議する下院歳入、軍事、外交各委員会の委員長3には対ウクライナ支援に対する慎重派大物が勢揃いしている。

*3=予算委員長にはローレン・ボーバート(コロラド州選出)、軍事委員長はマット・ゲーツ(フロリダ州選出)、外交委員長はティム・バーチェット(テネシー州選出)各議員が就任。

 一方、軍事通のダン・ビショップ(ノースカロライナ州選出)、ジョシュ・ハウレー(ミゾーリ州選出)、JD・バンス(オハイオ州選出)3議員は、サンドラ・ヤング行政管理予算局長に書簡を送り、ウクライナに対する軍事支援の詳細について全断面的な報告書を公表するよう要求した。

 書簡では「議会における今後の予算審議に賢明な判断をするため」とダメを押している。

https://www.theamericanconservative.com/ukraine-whose-war-is-this-anyway/

 こうした共和党の対ウクライナ支援に対するスタンスを、軍事外交専門家たちも取り上げ、メディアを賑わしている。

 戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンジアン上級研究員は、こう指摘する。

「ウクライナはロシアと戦うために今後も武器弾薬を必要としている。NATO加盟国も軍事支援しているが、その規模では米国が抜きん出ている」

「長期的には備蓄量が減り、米国は新たに製造せねばならない。だが製造には時間がかかり、まさかの時には間に合わない」

「短期的には旧式の兵器や弾薬を供与することになる。問題はそれを第三国から回すことだ。すでに弾薬などでは始まっている」

「だがこれらの武器・弾薬は同盟国との法的約束事として供与されているものだ。米国家安全保障エスタブリッシュメント内で予算上のプライオリティ(優先順位)について真剣な論議をすべき時期に来ている」

https://www.csis.org/analysis/united-states-running-out-weapons-send-ukraine