嘉手納基地の弾薬もウクライナに移送?
キャンジアン氏の見解を敷衍すればこうなる。
米国は、すでに在韓米軍が備蓄している弾薬をウクライナに移送、またイスラエルに供与した弾薬の一部をウクライナ向けに当てているとの情報がある。
沖縄の嘉手納基地からは移送されている可能性は十分あり得る。ウクライナ軍事支援は対中戦略にも影響を及ぼしかねない。
つまり、共和党保守派がウクライナ支援に消極的になっている理由の一つは、まさにこの点だ。
「このままズルズルとウクライナ支援を続ければ、米国および米国の同盟国の武器・弾薬の在庫は目減りしてしまう」というキャンジアン氏の主張そのものと言える。
米シンクタンク「クウィンシー・インティチュート」のウイリアム・ハーティング上級研究員はこう強調している。
「米国が2022年2月以降、ウクライナに行った軍事支援額はアフガニスタン戦争のピーク時を超えている。長期的には対イスラエル軍事支援よりも多い」
「ウクライナ国内に存在する2つの国家のうち、その一つの国の戦闘力強化を図るというユニークなケースだ」
そして軍事外交サイト「SPRI」の共同創設者、ステファン・セムラー氏は、バイデン政権の対ウクライナ軍事支援政策を厳しく批判する。
「ウクライナに対する軍事支援は、戦闘の早期終結を目的として始まったはずだ。軍事支援を続ける中で停戦、終結に向けた容赦なき外交努力がなされるべきだった」
「ところがバイデン氏は外交的解決を目指すようなシグナルは一切出していない」
「対ウクライナ軍事支援は米国防費の一部だ。終わりなき支援は、史上最高額に達している米国防費を青天井のリスクに陥れる」
(https://theintercept.com/2022/09/10/ukraine-military-aid-weapons-oversight/)
話を本題に戻すが、エイブラムズ供与にオースティン国防相が首を縦に振らない理由は、共和党内に勢いを増す「ウクライナ・ファティーグ(ウクライナ疲れ)」と無関係ではない。
このまま新たな追加予算を議会に要求してもそう簡単には通らないことを百も承知なのだ。
1月18日、対ナチス戦勝の地となったサンクトペテルブルク(旧レニングラード)で演説したプーチン氏は、ドイツに歴史認識を思い起こさせ、返す刀でバイデン氏のアキレス腱を蹴り上げたつもりだろう。