カリフォルニア州ハーフムーンベイ市の農園で銃を乱射し同僚を殺害した中国系のチュンリー・ツァオ(67)(1月23日、提供:San Mateo County Sheriff's Office/ロイター/アフロ)

なぜ「模範的移民」が銃を手に取ったのか

 米ロサンゼルス郊外モントレーパークのダンススタジオで11人が死亡した1月21日夜の銃撃事件で、米捜査当局は翌日、容疑者のアジア系の男(72)が自らを銃で撃って死亡したと発表した。

 23日には、今度はサンフランシスコ近郊ハーフムーンベイ市のキノコ栽培農園で7人が射殺され、容疑者のアジア系の男(67)が逮捕された。

https://www.foxnews.com/us/california-mass-shooting-who-huu-can-tran

https://www.latimes.com/california/story/2023-01-23/half-moon-bay-shooting-multiple-victims

 容疑者は前者はベトナム系、後者は中国系だった。犠牲者はハーフムーンベイ市で射殺された2人のメキシコ系男性を除くとすべてアジア系の男女だった。

 1930年後半、雲霞のごとくカリフォルニア州に入り込んできたアジア系移民を白人たちは「イエローペリル」(黄禍)と呼んだ。

 低賃金で雇われ、次々と白人労働者の仕事を奪い、白人社会を侵食していく異文化のアジア系(特に日本人移民)をさげすみ恐れた白人たちがペリルと言い出した。

 そして日米戦争が勃発、日系移民は強制収容所にぶち込まれた。

 戦後もアジア系移民は差別に耐え、ただ黙々と働き、1965年の移民法改正で国別のクォータ制が撤廃され、中国、香港、台湾、などから中国人移民が津波のように押し寄せて来た。

 ベトナム戦争終結後は共産主義体制を逃れたベトナム難民の多くがモントレーパークに住み着いた。

 今回事件が起こったモントレーパークは、中国人の不動産業兼投資家の謝樹剛氏が1970年代、当時白人が所有していた土地をプレミア価格で買収。

 それを中国や台湾からやって来た新移民に売却して作り上げたニューチャイナタウンなのである。

 サンフランシスコやロサンゼルスのチャイナタウンから中国系が移り住み、謝氏の「中国系のビバリーヒルズ」構想が徐々に実現していった。

https://www.latimes.com/opinion/story/2023-01-23/monterey-park-shooting-los-angeles-asian-communities

 商業地区には中国系スーパーやレストランが建ち並び、高台には高級住宅が建ち、人口の65%はアジア系となり、首都ワシントンには中国系下院議員(ジュディ・チュウ氏=民主党)を送り込んでいる。

 乱射事件が起こったのは、その一角にあるダンススタジオだった。