天皇崩御の知らせに、冷たい雨の中、皇居前広場に足を運ぶ人、人、人

 昭和天皇の崩御は1989年1月7日。各メディアは密かに用意していた予定稿をいっせいに発表した。

 その日、氷雨がしとしとと降る中、天皇崩御を知った人々が続々に皇居前広場に集まり、広い広場はたちまち弔問者の傘で埋まった。多くの人が目を潤ませていた。濡れた玉砂利にひれ伏して声を押し殺して嗚咽する人もいた。

天皇の死を悲しむ男性。彼は長い間座り続けた(写真:橋本 昇)
拡大画像表示

 私たち戦後生まれの人間は昭和天皇が“神”だった時代を知らないが、天皇は“神”としてだけではなく、“国民の象徴”としても立派に努めを果たされたのだと、この時に実感した。

 そして大喪の礼が執り行われた2月24日、多くの国民は心からの弔意を表した。

 企業や商店はすべて休業、国中でポールに黒布を被せた半旗が掲げられた。

 その日、大喪の礼の取材に向かう前、半旗が連なる銀座通りを歩いた。あるデパートの飾り付けがすべて取っ払われたショーウインドウに、ただ一つ小さな額に収められた昭和天皇の写真が飾られ、セピア調の光の中に浮かんでいた。

 それは、昭和という時代が終わりを告げた日でもあった。