ウェストミンスター寺院で挙行されたエリザベス女王の国葬(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(山中 俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授)

 エリザベス女王の葬儀がロンドンのウェストミンスター寺院で厳かに挙行された。日本の天皇・皇后両陛下、バイデン米大統領夫妻、マクロン仏大統領夫妻など、世界の首脳など約500人の海外要人とその配偶者が参列した。

 2013年に当時世界最大級の葬儀と言われた南アフリカのマンデラ大統領の葬儀を上回って、世界史上最大級の規模の葬儀となったのではないか。

 王位継承順位に基づき長男のチャールズ皇太子が新国王になり、孫のウィリアム王子が皇太子になった。

 2018年、私はウィリアム王子(当時)に、イスラエルのエルサレム旧市街で偶然に出会ったことがある。

 王子は旧市街地の施設を視察の途中だった。施設を出た後、障がいを持っている少女に優しく話しかけている姿が印象的だった。警備はあったが、1.5メートルくらいまで簡単に近づくことができて、写真も撮れた。開かれた英王室を感じた。

 このような開かれた王室を作ったのがエリザベス女王だ。親しみやすい人柄もあり、英国内はもちろん、世界の多くの人々に敬愛されたのだろう。

 しかし、英国国外の情勢を見ていくと、女王亡き後の英国を取り巻く状況は決して安心できるものではない。内憂外患と言っても良いくらいだ。本稿では、女王という支えがなくなった英国の行方、世界への影響を考察したい。

ウェストミンスター寺院に運ばれるエリザベス女王の棺(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)