故安倍晋三元首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 今月8日に死去した英国のエリザベス女王の国葬が19日に行われる。NHKでも生中継するようだが、いうなればこれで先を越されたことになる安倍晋三元首相の「国葬」の真価がいま再び問われる。

国葬の理由にならない岸田首相があげる理由

 国家元首でもない安倍氏を「国葬」にする理由について、決めた当人である岸田文雄首相は、ことあるごとに4点をあげて説明してきた。たとえば、8月31日の記者会見で岸田首相はこう指摘している。

(1)民主主義の根幹たる国政選挙を6回にわたり勝ち抜き、国民の信任を得て、憲政史上最長の8年8カ月にわたり重責を務められたこと。

(2)東日本大震災からの復興や、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的な外交を主導し、平和秩序に貢献するなど、様々な分野で歴史に残る業績を残されたこと。

(3)諸外国における議会の追悼決議や服喪の決定、公共施設のライトアップを始め、各国で様々な形で国全体を巻き込んでの敬意と弔意が示されていること。

(4)民主主義の根幹である選挙活動中の非業の死であり、こうした暴力には屈しないという国としての毅然たる姿勢を示すこと。

 しかし、これはもはや理由になっていないはずだ。