エリザベス女王の棺の葬送行進(9月14日、ザ・マルで筆者撮影)

(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

[ロンドン発]英王室史上最長の在位70年に及んだエリザベス女王が9月8日、96歳で亡くなった。19日にロンドンのウェストミンスター寺院で国葬が営まれる。天皇皇后両陛下や「米英特別関係」を維持するジョー・バイデン米大統領ら国内外の要人約2000人が参列。女王の治世は「平和」の時代だった。チャールズ新国王の船出には早くも不穏な暗雲が漂う。

新国王は「小さな王室」を目指す

 女王の逝去を伝える暗号「ロンドン橋が落ちた」で始まる王位継承プロセス「ロンドン橋作戦」は女王がまだ30代の1960年代から水面下で周到に練られてきた。王位継承に空白や論争が生じないよう、世界の要人への連絡、諸行事の進行、遺体の安置や国葬会場のレイアウトまで一分の隙もなく時間と空間が設計され、アップデートされてきた。

チャールズ国王とカミラ王妃(9月9日、バッキンガム宮殿で筆者撮影)

  逝去を発表した英王室の公式文書でチャールズ皇太子の「国王」即位とカミラ夫人が「妃(プリンセス・コンソート)」ではなく「王妃(クイーン・コンソート)」を名乗ることが明らかにされた。カミラ夫人の称号問題は今年2月、在位70年を祝うプラチナ・ジュビリーに合わせて女王が国王と王妃誕生を願う胸中を明らかにするまで片付いていなかった。

 ウィリアム王子が「皇太子」に、キャサリン妃がダイアナ元皇太子妃以来、空席になっていた「皇太子妃」になった。しかし自動的に「王子」と「王女」になると考えられていたヘンリー公爵(王位継承順位5位)とメーガン夫人の長男アーチーちゃん(同6位)と長女リリベットちゃん(同7位)の称号は「マスター」と「ミス」のままだった。

 アーチーちゃんとリリベットちゃんは米国籍を取得する可能性もある。ヘンリー公爵とメーガン夫人の気持ちが定まっていないのか、それとも英王室との話し合いが決着していないのか。「海外で人生を歩むハリー(ヘンリー公爵の愛称)とメーガンに私の愛を伝えたい」というチャールズ国王の言葉とは裏腹に複雑な波紋が広がった。

軍服姿のウィリアム皇太子とモーニング姿のヘンリー公爵(9月14日、ザ・マルで筆者撮影)