(国際ジャーナリスト・木村正人)
[ローマ発]やはりこの人物が首相になる――。イタリア総選挙の投開票が25日行われ、右派連合が分裂した左派を退け、ネオファシズムを源流とする新興の右派政党「イタリアの同胞」のジョルジャ・メローニ党首(45)がイタリア初の女性首相に就任する運びになった。
右派連合は国民が大統領を選ぶフランス型の半大統領制を目指しており、イタリアだけではなく欧州政治の転換点となる。
曖昧になった「極右」と「右派」の境目
メローニ氏は勝利集会でこう力説した。
「右派連合が政権を担う明確な意思表示がイタリア国民からなされた。『イタリアの同胞』が議会第1党になったことは多くの人にとって多くのことを意味する。子供を授かること、イタリア人であることを再び誇りに思い、イタリア国旗を掲げる方法を見出す。それがこの国を統治することを任された私たちの仕事だ」
投票率は63.9%と前回2018年より9ポイント超下がり、戦後初めて70%を割った。
イタリア放送協会(RAI)の開票予測(午前3時半)によると、下院は「イタリアの同胞」、右派政党「同盟」(マッテオ・サルビーニ書記長)、中道右派「フォルツァ(頑張れ)・イタリア」(シルビオ・ベルルスコーニ元首相)の右派連合が42.9%。民主党など左派連合は26.6%、「五つ星運動」は16.3%。
メローニ氏は15歳の時、ネオファシスト政党「イタリア社会運動」の青年組織に参加し、2012年に「イタリアの同胞」を結党。ムッソリーニについて「いくつかの過ちを犯した。歴史的に彼はまた多くのものを生み出したが、それで救われるわけではない」と一線を引く一方で、その連続性を匂わせる「イタリア社会運動」時代の三色の炎をシンボルに掲げる。
国家保守主義者かつ民族主義者。カトリックに基づくイタリアの伝統的家族観を尊重し、中絶や同性婚に反対する宗教保守だ。自らは結婚せず、ジャーナリストのパートナーとの間に娘が1人いる。イタリアに向け地中海を渡る難民を救助する慈善団体の船を沈めよと発言、今回の総選挙でも海上封鎖を唱え、リベラル勢力から「極右」と批判される。