(英エコノミスト誌 2022年9月17日号)
君主制は時代遅れだが、エリザベス2世の下では成功を収めた。これは女王の後継者とほかの民主主義国にとって教訓になる。
9月19日、英国の女王エリザベス2世が埋葬される時、ロンドンは短時間ながら世界の中心になる。
1世紀前の大英帝国の栄華をかすかに感じさせるように、米国のジョー・バイデン大統領をはじめ数十カ国の国家元首がウェストミンスター寺院で葬儀と賛辞に立ち会い、10億人かそれ以上の一般市民が自宅でその様子を見守る。
時代の精神に逆らう君主制
これはエリザベス女王の長寿の賜物だ。
70年に及ぶ在位期間は、今ではもう過ぎ去ったあの時代の黄昏とともに始まり、外国への公式訪問と賓客のもてなしに明け暮れた日々だった。
だが、葬儀に対する関心の高さは、女王の成功の表れでもある。
英国内でもめ事が生じ、西側諸国でポピュリストが台頭し、中国とロシアが民主主義的なシステムへの挑戦を主導してきているなかで新国王チャールズ3世が即位した今、女王の成功は検証に値する。
表面的には、英国の君主制は時代の精神に逆らっているように見える。
恭順は消え去ったのに、古めかしい敬称のやりとりとフロックコート姿の召使いのうえに君主の威厳が築かれている。
実力主義の時代にあって、君主制のルーツは正当化できない生まれつきの特権に基づいている。
ポピュリズムはエリートが時代遅れであることを意味するのに、君主という最も目立つエリートは排除されずにとどまっている。
アイデンティティー政治はナラティブ(物語)の流行を意味しているのに、女王はファッショナブルとは言えない帽子の下に感情を隠した。
本来なら、エリザベス女王の時代に君主への支持は崩れたはずだった。
本誌エコノミストも時折、そうなるのではないかと想像した。それにもかかわらず、英国の君主制は成功を収めた。