(英エコノミスト誌 2022年8月27日号)
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中国はやり方を変えるのか――。それ以外に選択肢がないかもしれない。
中国によるグローバルなインフラ整備計画「一帯一路」の希望と慢心が凝縮された瞬間と言えば、2014年にスリランカで行われた「コロンボ・ポート・シティ」の起工式の右に出るものはほとんどない。
式典には中国の習近平国家主席が直々に出席し、スリランカの首都の沖合を埋め立てた665エーカー(約269万平方メートル)の土地にマリーナやホテル、高級住宅などを備えたハイテクオフショア金融センターを建設する総工費150億ドルの計画についてプロジェクトマネージャーが紹介する傍らで、満足げにうなずいてみせた。
スリランカの政府高官は、このプロジェクトをドバイやシンガポールになぞらえた。習氏は21世紀海上シルクロードの「主要なハブ」と形容した。
海上シルクロードとは一帯一路の構成要素で、港湾やその関連インフラを整備する資金を、西側諸国や国際機関が融資に際して要求してくるお節介な条件を付けずに融通し、海上貿易の再編を目指す構想だ。
債務返済に窮する一帯一路参加国
時は流れて2022年8月。コロンボ・ポート・シティは言うに及ばず、スリランカ自体の将来が崖っぷちに立たされている。
燃料・食料不足で大打撃を受けたスリランカは、5月にデフォルト(債務不履行)に陥った後、国際通貨基金(IMF)に救済を求めている。
同様に多額の借り入れがあるパキスタンもIMFの救済を受けており、そのほかにも「一帯一路」に参加した十数カ国が、債務支払いが困難な状況(ディストレス)に直面している。
こうしたことから、世界最大の政府債権者である中国にはどの程度の責任があるのかという議論が熱を帯びている。
だが、いま重要なのは、中国がこの事態にどう対応するか、だ。
中国はほかの債権者と協調する気があるのか。習氏独自の戦略地政学的目標を犠牲にする恐れがあっても協調するのか。スリランカがその重要な試金石になる。
問題の中心にあるのが、中国とパリクラブ――大半が西側に属する22カ国の債権国グループ――との関係だ。
中国は同クラブの「アドホックな参加者(準会員)」だが、正式加入の誘いを断っている。なぜか。
理由の一つは、米国が牛耳るIMFや世界銀行とパリクラブの間に密接なつながりがあること。
もう一つは、パリクラブが全会一致、情報共有(中国は融資条件を秘密にしておくのを好む)、すべての債権者間の「平等性確保」の3点を原則としていることだ。