新興国の債務危機の再来?
こうした状況に、1980年代や1990年代の新興国債務危機との類似点を見いだす向きもある。
当時はパリクラブのメンバーも融資の詳細を明らかにせず、債務の繰り延べを繰り返した結果、低成長の「失われた10年」が生じるに至った。
債務の元本削減にシフトしたのは、1989年に米国のブレイディ提案が、そして1996年に重債務貧困国(HIPC)イニシアティブが打ち出された後のことだ。
上海国際問題研究院(SIIS)の叶玉氏と周玉淵氏は先日発表した論文で、ブレイディ提案の「新バージョン」が必要だと主張し、中国としては「すべてのカテゴリーの債権者の間で負担の公平公正な分担が行えるように」、融資について透明性を高め、米国をはじめとするパリクラブのメンバーと調整するべきだと促している。
中国の姿勢の変化は、インフラ整備融資の元利返済に苦労する借り手が出てきたことを受けて緊急融資を行う昨今の取り組みとも関係しているのかもしれない。
米ウィリアム・アンド・メアリー大学の研究所エイドデータによれば、中国の国有銀行はパキスタンとスリランカに対し、ここ4年間で計240億ドル近い国際収支融資を実行している。
エイドデータのブラッドリー・パークス氏は、「中国は、IMFの代わりになれるかもしれないという考えに手を出している」と指摘する。
「いま私たちが目にしているのは、リアルタイムで学び、対応していく過程だ。中国も今では躊躇していると思う」
スリランカの債務再編の行方
中国のインフラ整備融資に対する警戒感がスリランカで最初に強まったのは2017年、元利返済に窮した政府がある港――中国が資金調達と建設工事を支援した港――を中国の国有企業に99年間リースすることを認めた時だった。
ほかのプロジェクトでも破綻が続くと、中国の国有銀行は緊急融資重視に転じ、エイドデータによれば、2018年10月から2022年3月までの間に計38億ドルが貸し出された。
大方の観測筋は、中国の融資がスリランカの危機を引き起こしたわけではないとの見方で一致している。
スリランカ政府が2019年に行った減税と、新型コロナが2020年に観光業にもたらした壊滅的な打撃が原因だと考えている。
だが、スリランカの元政府高官らは、早くIMFにアプローチした方がいいというアドバイスもあったが中国の流動性資金注入を受けて退けられた、と話している。