(英エコノミスト誌 2022年8月27日号)
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半年前、ロシアがウクライナに侵攻した。戦場では消耗戦が繰り広げられ、死と破壊の前線は1000キロもの長さに及んでいる。
その前線を超えたところでは、もう一つの戦いが激しさを増している。
1940年代以来見たことのない規模と獰猛さの経済紛争だ。西側諸国は制裁の新兵器を投入し、1兆8000億ドル規模のロシア経済をマヒさせようとしている。
この輸出入禁止措置の効果は、ウクライナの戦争の帰結を左右する重要なポイントになる。
だが、その一方で、自由民主主義諸国が2020年代後半以降までその力を世界的に投射し、中国に対しても影響力を振るう能力についても多くを明らかにする。
心配なことに、制裁戦争はこれまでのところ、予想されたほどには順調に進んでいない。
ウクライナ侵攻で前例のない制裁
欧米とその同盟国は今年2月から、何万というロシアの企業や個人に対し、過去に例のない禁止令の集中砲火を浴びせている。
ロシア政府は外貨準備5800億ドルの半分を凍結され、ロシアの大手銀行の大半は世界的な資金決済システムから切り離された。
米国はもうロシアの原油を購入しておらず、欧州の禁輸措置も来年2月に全面施行される。ロシア企業はエンジンから半導体に至るまで、様々な部品の購入を阻まれている。
オリガルヒ(新興財閥)や政府高官は入国禁止や資産凍結の憂き目に遭っている。
米司法省が立ち上げたタスクフォース「クレプトキャプチャー」は、ファベルジェの卵(宝石や純金でできた装飾用の卵)を積んでいたかもしれないスーパーヨット1隻を押収した。
これらの対応策は西側諸国の世論を満足させるだけでなく、戦略的な目的を持つ。
短期的には、少なくとも当初は、ロシアの流動性・対外収支危機の引き金を引き、ウクライナでの戦費の調達を困難にしてクレムリンに考え方を改めさせることを目指していた。
長期的には、ロシアの生産能力と技術の高度化を損なうことを狙っている。
もしウラジーミル・プーチン大統領がほかの国の侵略を切望することがあっても、資源をあまり利用できない状況にしておこうというわけだ。
そして最終的には、ほかの国々が主戦論に傾かないようにすることを目標としている。