(英エコノミスト誌 2022年8月13日号)

エネルギー供給事業者のシュタットベルケを訪問したドイツのショルツ首相(8月12日、写真:ロイター/アフロ)

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安全保障とエネルギーに関するより現実的な政策は、ドイツが欧州を先導することに役立つはずだ。

 昭和天皇の言葉を借りるなら、ウクライナでの戦争は「必ずしも好転せず」、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に有利な方向へ傾かなかった。

 戦争によって、フィンランドとスウェーデンは北大西洋条約機構(NATO)の保護下に駆け込んだ。

 ウクライナのナショナリズムが深まり、プーチン氏の専制に代わる政治体制としてウクライナが示す民主主義が強まり、ロシアのエネルギーを購入していた顧客がよそに目を向けるようになった。

 また、戦争は眠れる巨人ドイツをつつき、ロシアにとって最高のパートナーにして最悪の敵でもあった国を目覚めさせた。

 プーチン氏の戦争行為は、ドイツを同氏の悪夢に変えるきっかけになるかもしれない。結束を深めた欧州を引っ張る、より強く、大胆で決意の固いリーダーだ。

ロシアの脅迫に弱いエネルギー依存

 ドイツには、この刺激が必要だった。

 慢心し、少しばかり自己満足していたドイツは、自国の周辺でいかに早く世界が変わりつつあるかに気づくのが遅かった。

 しかし今、ドイツ国民が民主主義国において珍しいことを経験しているなか、絶好のチャンスが手の届くところにある。

 経済と安全保障に対する広範かつ抜本的な改革の必要性についてコンセンサスが形成されているのだ。

 かなり前から暗雲が垂れ込めていた。