(英エコノミスト電子版 2022年8月4日付)
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中国の平潭島には短パンにサンダル履きの観光客が集まっていた。日差しを避けようと日傘の柄をしっかり握っている人がいる。
カメラを手にした人の多くは、平潭と中国東海岸の福建省とを隔てる海壇海峡の方を向いている。
休暇を楽しむ人たちが8月4日に撮ったスナップ写真には、頭上を飛ぶ軍用ヘリコプターの編隊や空の彼方に消えていくロケットの姿がとらえられていた。
中国本土から台湾沖に向けて26年ぶりに発射されたミサイルだ。
米国連邦議会のナンシー・ペロシ下院議長を乗せた飛行機は、中国の人民解放軍が発砲を始める前の日に台湾を離れたばかりだった。
中国の爆撃機や戦闘機は複数の飛行場から出撃し、軍艦は「攻撃」演習を行った。海域封鎖の演習のために台湾島の東側に向かった軍艦もあった。
中国が自国の領土の一部だと主張する台湾をペロシ氏が訪問したことを受けて行われた演習は、8月7日まで続くことになっていた。
中国の怒りとともに強さを知らしめようとする行動だ。だが戦争の前兆ではないし、中国の弱さのようなものをいずれ露わにするかもしれない。
90年代半ばの台湾海峡危機との違い
今回の大演習は前回の台湾海峡危機――当時の台湾総統が米国を訪問した後、1995~96年に発生した――の際に中国が行った演習を彷彿させる。
だが、今回は派手なうえに好戦的だ。
実弾を使用するとされた演習区域は1990年代の訓練時よりも明らかに台湾島に近く、台湾の領海を侵犯している(地図参照)。