船がどこにいるかを教えてくれる船舶トラッキング・サービスのウエブサイトには8月4日、商船が演習区域を慎重に回避している様子が映し出された。
船の数こそ多かったが、中国か台湾の沿岸に近いルートを取っていた。
食料の60%以上、エネルギーの98%を輸入に頼る台湾を、非公式な封鎖や正式な「検疫(1962年のミサイル危機で米国がキューバに課した類いの措置)」によって中国が孤立させられることが改めて示された格好だ。
台湾周辺の島々も標的になる可能性
台湾の周囲にある島々の脆弱さも懸念されている。
ペロシ氏が台湾を離れたその日、中国の海岸から10キロしか離れていない金門島の台湾軍は、頭上を飛んでいた中国のドローンに信号弾を発射した。
その翌日には、やはり中国本土から20キロも離れていない台湾の馬祖列島の近くで中国のミサイルが発射された。
それらに比べれば台湾島に近い澎湖諸島も、標的にされる恐れがある。
イアン・イーストン氏は著書『The Chinese Invasion Threat(中国侵略の脅威)』で、澎湖諸島は「(中国の)侵攻艦隊の側面に切り込むことができる要塞だ」と記している。
そうした不気味なシナリオが改めて注目を集めている様子を見て、習氏はほくそ笑んでいるかもしれない。
数カ月後に開かれる共産党大会で党トップの3期目続投を目指している以上、弱いと思われるわけにはいかない。
だが、習氏は安定も望んでいる。
恐らく今回の演習は戦争の前段階というよりは、ペロシ氏の台湾訪問よりずっと前から行われている威嚇作戦の一環だと理解した方がいいのだろう。