電磁カタパルトを備えた空母「ジェラルド・フォード」に着艦する「F/A-18E」(4月19日、米海軍のサイトより)

 ナンシー・ペロシ米下院議長による台湾訪問で一挙に台湾海峡が緊迫化した。

 7月28日、ジョー・バイデン米大統領と習近平中国国家主席が電話協議を行った際、習氏は、ベロシ氏の訪台があれば「深刻な結果」をもたらすと述べ、「火遊びする者は身を焦がす」と強く警告した。

 中国は威嚇の度を高め、軍事圧力を強めてペロシ氏訪台の阻止に臨んた。だが結果的にはペロシ氏の訪台を阻止できなかった。

 面子を潰された中国は、台湾を包囲するかのように6か所で実弾演習を実施し、これまで、11発の弾道ミサイルが実射され、うち5発が日本の排他的経済水域に落下した。

 他方、米国は偶発的衝突に備え、米第7艦隊所属の原子力空母「ロナルド・レーガン」、最新鋭戦闘機「F-35B」を艦載した強襲揚陸艦「トリポリ」「アメリカ」などを台湾周辺海域に出動させた。

 米海軍は空母「エイブラハム・リンカーン」も投入できたが、実施中のリムパック演習を優先して、投入はしなかったようだ。

 ペロシ氏の訪台については事なきを得た。

 だが、その後の「重要軍事演習」という名の中国の威嚇行動を止めることはできなかった。

 今回の威嚇行動の規模は1996年の「台湾海峡危機」をはるかに上回ると指摘される。1996年の様相と様変わりさせた要因は何であるのか。

 1996年、中国は台湾初の総統選挙に際し、台湾近海にミサイルを発射し、民主化の動きを牽制した。