安倍元首相が暗殺された奈良県・大和西大寺駅付近の現場検証(7月8日、写真:三田 崇博/アフロ)

 安倍晋三元総理が参議院選挙の遊説中、凶弾に倒れた。日本だけでなく、世界にとっても大きな損失である。海外から悼む声が相次いだことでもその偉大さが分かる。

 事件は白昼堂々、衆人環視の中で発生し、戦後初めて総理大臣経験者が殺害されるという最悪の事態となった。

 事件の動画はSNSを通じて世界中に拡散し、日本は世界で最も安全な国という神話は一挙に崩れ去った。

 警備体制の不備が問われ、 警察庁は7月12日、警備上の問題点を洗い出す検証チームを設置した。

 8月中にも結果を取りまとめ、要人警護の在り方について、抜本的な見直しを検討するという。

 検証項目としては、警護員数および配置、警視庁警護員(SP)と奈良県警との連携、交通規制、SPの警護動作などがあるようだ。

 じっくり検証してもらいたいと思う。だが、危機管理の観点からみると、大事な観点が抜けている。

 危機管理について「危機を未然に防止するものは、決して英雄になれない」という言葉がある。

 危機管理の目標はあくまで「未然防止」であり、「英雄」はいらない。

 今回、もし2発目が撃たれる前にSPが安倍氏に覆いかぶさって、事なきを得ていたら、SPは「英雄」になっていただろう。