安倍晋三元首相(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 安倍晋三元首相が、銃で撃たれた。そして、ついさきほど亡くなったとの速報が流れた。心から御冥福をお祈りする。犯人は元海上自衛官だという。報道されている情報しかないので動機などはまだわからないが、決して許すことのできない凶行だ。

 その一方、今回の件で痛感したのは、首相や閣僚、首相経験者らに対する警護体制の甘さと難しさだ。こうしたVIPが地方に出向く場合には警視庁のSPが1~2名程度同行する。しかしそれでは人員的に足りないので、通常は地元警察本部から数人の警護担当者が派遣され合流することになる。あとは地元の県連関係者や候補者事務所のスタッフが脇を固めたりする。

 だが、地方の警察本部から派遣された警護担当者は、VIPの警護には慣れていない。地元の道府県連や事務所スタッフならなおさらだ。

元首相の後方に目を配る担当者はいなかったのか

 ニュース映像を見た範囲での印象になるが、今回、街頭で演説している安倍元首相の後ろにいる関係者は本来、元首相とは背中合わせのように立って後ろ側に目を光らせなければならない。それが安倍元首相と同じ方向、目の前にいる大勢の聴衆のほうを向いていたように見える。だとしたら警護体制の甘さを指摘されても致し方あるまい。

 だが、要人の背後を固めていたからといっても、今回のような銃撃から完全に警護できるかと言われれば、それも難しいかも知れない。

 そもそも日本の要人警護は、銃による狙撃をほとんど想定していない。他国に比べ、はるかに厳しい銃規制が実施されている日本では、これまで銃撃を想定しなくてもよかったのだ。今回の犯人は自作の銃を使用したと報じられている。3Dプリンターの技術も発達しているので、銃器の自作はますます容易になるものと思われる。