(舛添 要一:国際政治学者)
ウクライナでの戦闘は止む気配を見せない。2月24日のロシア軍の侵攻から4カ月以上が経過したが、今後の展開はどうなるのか。戦争は長期化すると見られているが、いつまで続くのか。当事国以外の世界は、すでに「ウクライナ疲れ」、「ゼレンスキー疲れ」の状況であり、人々の関心は薄らいできている。
物価高に音を上げる庶民、西側では政権・与党の支持率が軒並み低下
ウクライナ戦争の影響は、物価高という形でもろに庶民の生活を直撃している。石油や天然ガスの供給が減少したため、ガソリンや光熱費が高騰している。1リットルが170円というガソリン価格には日本人も困っているが、フランスは280円、イタリアは310円である。その不満は自国の政府に向かっている。
6月19日に行われたフランスの国民議会選挙で、マクロン大統領の与党が過半数割れを起こしたのも、このインフレが原因である。政府の無策を批判する左派と極右が大きく票を伸ばした。
直近の消費者物価指数の伸び率を見てみると、日本が2.5%なのに対して、アメリカが8.6%、イギリスが9.1%、ドイツが7.9%である。
22日公表のロイター・イプソス調査によると、バイデン大統領の支持率は36%で、4週連続して低下しており、過去最低である。この傾向が続けば、11月8日に行われる議会の中間選挙で、民主党は上下両院のいずれかで少数派に転落する可能性がある。
有権者の関心は経済であり、物価高が生活を困窮させているとして、バイデン政権の「無策」に対する批判を強めているのである。トランプ前大統領の最低支持率は2017年12月の33%であったが、ウクライナ戦争が長期化し、物価高に歯止めがかからないと、この数字以下に支持率が低下することも考えられる。