1995年7月の危機で中国が最初の数日間に発射したミサイルはわずか6発。うち1発は正常に動作しなかった。

 中国国防省によれば今年8月4日には16発を発射しており、長距離砲からは小型のロケットをもっと大量に撃っている。

 日本は、少なくとも5発が日本の排他的経済水域(EEZ、自国の沿岸から200海里=約370km以内に設定できる水域)まで飛んできたと発表した。

 そのうち4発は台湾島の上空を通過しており、1発は首都・台北の真上を通っていた。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のテイラー・フラベル氏は「人民解放軍が台湾島を標的にした演習を行うことは過去に例がなく、非常に挑発的だ」と語る。

 同じ日に人民解放軍の航空機22機が台湾海峡の「中間線」を超えたことも、同じように記録的だと考えられている。

20年間で軍事バランスが激変したが・・・

 こうしたことはすべて、台湾海峡をはさんだ軍事バランスが過去20年間で様変わりしたことの反映だ。

 1995年当時、中国の人口は台湾の約60倍に上るのに、中国の防衛予算は台湾の2倍でしかなかった。今日では20倍を超えている。

 また米国防総省自身の説明によれば、人民解放軍は配備できる軍艦と潜水艦、地対空ミサイル、巡航・弾道ミサイルの数で米国に並んだか、上回っているという。

 中国の陸軍、空軍、海軍は、1995年にはほとんど手が届かなかった統合作戦の演習もますます行うようになっている。

 東シナ海や南シナ海をフィリピン海と分ける「第一列島線」より東に軍艦や軍用機を送り込むことも珍しくない。

 こうしたことの積み重ねによって台湾を制圧できるようになったかどうかは分からない。

 米ワシントンのシンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)が5月に行った机上演習では、1週間の戦闘の後に中国は部隊を台湾に上陸させたものの、短期間で勝利を収めるどころか、山岳地帯を横断して台北にたどり着くことすらできなかった。

 2027年を想定した戦いは結局、長期戦になった。