オーストラリアの退役将軍ミック・ライアン氏は「基本的に、人民解放軍は作戦行動へのアプローチをこちら側に見せてしまっているので、こちら側としては、これを将来覆す方法を机上演習で練ることができる」と語る。
例えば、演習区域の配置は中国が封鎖作戦をどのように展開するかを考える手がかりになると言う。
演習自体も、人民解放軍の海軍が海上で大規模な作戦行動を行う能力をどこまで高めてきたか、そして6年前に編成されて台湾担当になった東部戦区が危機の最中に空、海、サイバー空間、宇宙空間での活動を統率できるかを示唆することになる。
「人民解放軍はほぼ間違いなく、統合指揮・統制の問題に対処する機会としてこの演習を利用するだろう」とライアン氏は言う。
「その種の作戦行動では、彼らは西側より数十年遅れている」
危機の結果はすべて中国に不利
だが、もし中国が台湾を脅して服従させようとしているのなら、わざとらしい演出はきっと逆効果になる。
台湾では1995年、当時の李登輝総統の訪米をきっかけに中国との関係が悪化した。
翌96年3月には総統選挙が初めて直接選挙で行われ、中国がそれにあわせてミサイルの発射実験を行ったが、台湾市民に現職の李登輝氏への投票を思いとどまらせるには至らなかった。
米国防総省で昨年まで対中国政策を統括する立場にあったライル・モリス氏は、ペロシ氏の台湾訪問に対する中国の過剰反応も、まさに同じ効果をもたらすことになりそうだと指摘する。
今回の演習を受けて、台湾の防衛力強化と中国による侵略回避の取り組みは加速するかもしれない。
「危機の結果はすべて中国にとって悪いものになっている」とモリス氏は話している。